Exploring Deep Tech & Solving Deep Issue
「熱」で創り出すディープテックの生態系
テックプランターは未解決の課題“ディープイシュー“を科学技術の集合体“ディープテック“で解決する、アジア最大のディープテックベンチャーエコシステムです。
ベンチャー企業や起業を志す研究者を中心に、大手企業や町工場、中堅企業・中小企業、そしてベンチャーキャピタルや弁護士・弁理士・会計士といったプロフェッショナル、研究支援機関や自治体といった、ディープテックで社会課題を解決するためのあらゆるプレイヤーが、国の枠を超えて”熱”をもって参加するディープテックの生態系です。
7つの領域、12の地域、6つの国をまたいだエコシステム
テックプランターは、7分野のディープイシューを設定し、各領域別に課題解決を目指す領域別テックプランター、地域に新しい産業を生み出す基盤をつくるために12の地域で実施する地域テックプランター、そして日本以外の東南アジア6カ国で開催する国別テックプランターの3つの要素により構成されています。各テックプランターに参加するプレイヤーは、統合されたデータベースに格納され、私たちはこれらを活用して地域を越え、国を越えて科学技術の集合体として様々な課題の解決を進めています。
ディープテックには新たなエコシステムが必要だった
2000年代の日本のベンチャーに起きたこと。
2001年、日本の経済産業省が『大学発ベンチャー1000社計画』※1を発表しました。日本の産業競争力の強化を目的に、研究成果の事業化を積極的に推進し、3年間で1000社のベンチャー創出を目指すという内容です。結果的に、大学発ベンチャーの数は2004年度末に1207社に到達。数値的には、一定の成果を挙げることとなりました。
この動きをさらに後押しすべく、2006年には改正会社法が成立し、法人設立のハードルが大きく下がります。いよいよ日本にベンチャー時代が到来する。誰もがそう期待しました。しかし実際には、その後10年間の大学発ベンチャーの増加ペースは低迷しました。なぜか。今となっては、その理由は明らかです。
ベンチャーは存在しても、ベンチャーを育成できるシステムが存在しない。ハンズオンや産学連携のキーワードはあっても、そのノウハウが伴わない。単発の成功事例はあっても、点を線につなぐ動きがない。したがって再現性が生まれず、大学発ベンチャーが大きな流れを形成するまでには至らない。これが日本の2000年代でした。
シリコンバレーのインキュベーションはなぜ成功したのか
その一方で、同じタイミングでベンチャーが大躍進したのがアメリカです。西海岸のシリコンバレーを中心に、ITベンチャーの成功者が自らの個人資産を「次世代の育成」に投資し、短期間で彼らを成長させるシードアクセラレーターモデルを構築します※2。
拠点となるインキュベーションスペースでは、若いベンチャーはもちろんのこと、ベンチャー出身のインキュベーター、大企業、金融機関、地方政府機関など、多種多様な人材が混ざり合い、次々に新たなスターが輩出されていく。まさにベンチャー育成のエコシステムがそこにはありました。
同じシステムを、日本でも構築しなければならない。しかも、すでに流れが出来上がったITベンチャーではなく、日本の強みが生きるディープテックベンチャーの領域でこそ、ベンチャー育成のエコシステムをつくらなければならない。そうしなければ、日本の未来はない。その危機感こそが、テックプランターの始まりでした※3。
ディープテック領域のエコシステムに大企業の参画が欠かせない本当の理由
あらゆる大企業は「元ベンチャー」である。
アクセラレータープログラムへの大企業の参画理由としては、一般的には「事業シナジー」を中心とする説明がなされます。大企業は自社の関連領域への事業シナジーを期待してベンチャーを支援する。ベンチャーはその資金面を含めてその支援によって成長する。双方の利益の合致。Win-Win。しかしTECH PLANTERでは、この考えを採用していません。
TECH PLANTERが大企業に最も期待しているのは、「元ベンチャー」としての知見です。あらゆる大企業は、最初から大企業だったわけではありません。崇高な創業精神を掲げ、まだ世界に存在しない事業をつくりだすことで成長してきた大企業には、自らの経験としてベンチャー育成の秘訣が内面化されているはずです。その知見を、次世代の育成と社会課題解決のために活用させてほしい。これこそが、TECH PLANTERが大企業の参画に期待する最大の要素です。
大企業がヒトとして参画し、ヒトとして成長するエコシステム
大企業が自らの源流を振り返り、その知見を若いベンチャーに共有するプロセスには、大企業自身にとっても新たな成長の契機があるはずです。ベンチャーが抱く未来への視点と、自らの源流を追体験するリフレクションを掛け合わせることによって、大企業にも新たな事業創造のきっかけが生まれる。私たちは、そうした場を確立してきたいと考えています。
その意味では、TECH PLANTERに大企業が参画する理由は「ヒト」だと表現できます。大企業の「ヒト」としての知見を若いベンチャーに共有し、そのプロセスを通じて大企業自身も「ヒト」として新たな成長をしていく。つまりはそれが、TECH PLANTERがエコシステムである所以でもあるのです。
研究だけでは「モノ」はできない。しかし日本には町工場がある。
知識の社会実装には、図面のないものづくりが不可欠だ。
大学には知識がある。しかしその知識と社会との間には大きな溝があり、両者が接続されていない。この課題意識こそがリバネスの設立理由であり、TECH PLANTERもその延長線上に位置付けられます。では、知識を社会に接続するためには、つまり知識の社会実装を行うためには、何が必要でしょうか。それが「ものづくり」です。
ディープテックベンチャーは、最先端のテクノロジーやアイデアを持っています。しかし、それを実際に形にすることができなければ、社会に役立てることはできません。それは日本の大手企業が行うような、定められた仕様のもとで正確な図面と生産計画をベースとしたものづくりではなく、まだ図面化もできないものづくりなのです。そして従来は、ベンチャーがそういったものづくりを相談できるカウンターパートは存在しませんでした。
日本の製造業を世界に押し上げた町工場の気概
ここに名乗りを上げたのが、東京都墨田区の町工場である浜野製作所です。「ベンチャーのビジョンを理解し、具体的なものづくりを提案する」ことを実践し、今や大躍進を遂げているオリィ研究所やWHILLのプロトタイピングを手掛けました。昭和の時代の町工場が日本の製造業を世界へと押し上げたように、これからの町工場はベンチャーをものづくりの力で支えていく。浜野製作所の根底にあったのは、町工場としての気概だったのです。
現在、この取り組みは東京・大阪・栃木の町工場6社によるスーパーファクトリーグループに発展し、プロトタイピングだけでなく100-1000個単位での量産体制を構築できる環境が整っています。さらにPoCの拠点としてのセンターオブガレージが立ち上がり、ニッチトップメーカーや大企業の参画による製造・テストマーケティング面での支援も充実しつつあります。テックプランターはこれらの強力なパートナーによって、ベンチャーのものづくりを支援し、次なるステージへと後押しする機能を獲得したのです※4。
なぜTECH PLANTERは小口投資を実施するのか。
国や地域の枠を越えて、熱と技術を持つ研究者に社会実装のための資金を提供する
テックプランターの立ち上げ時から現在にかけて、ディープテックベンチャーの資金調達環境は大きく変化をしてきました。テックプランターを開始した2014年時点では、ディープテックベンチャーに対する小口投資自体が常識外れのアプローチとして認識されていました。しかしながら、その後政府主導により数多くの大学発VCが誕生し、ディープテック領域への投資を行うVCも大幅に増加し、今やディープテック領域は主要な投資領域として認識されています。ただし、その投資資金の多くは、東京を中心として研究資金を多く取得する国立大学に流れる傾向にあります。その一方で、地方大学で生まれたユニークな技術やそれを自らの力で社会に実装しようという研究者に対して、創業期のタイミングで研究者の熱と技術を理解し、出資してくれるVCは多くありません。この状況は東南アジア各国においても同様です。
500万円の呼び水が、年間100億円以上の調達につながっていく。
TECH PLANTERのエコシステムにおいては、VCでは投資できない小口投資の役割をリバネスキャピタルやグローカリンクが担い、その後のシードステージをリアルテックファンド(現アントロッド)やその他のVC/CVCが担うというシームレスな体制が整っています。
解決したい社会課題と解決に向けたコア技術を有しながらも、ベンチャーとしてのステージはアイデア段階、決算書も事業計画もない。そんなベンチャー企業に対して500万円程度の小口投資を初期に行うことで、立ち上げのタイミングでのディープテックベンチャーの成長を下支えし、その後の資金調達の呼び水とする。この投資戦略が功を奏し、2024年現在では、テックプランター出身ベンチャーが直近1年間で合計100億円以上の資金調達を行うに至っています※5。
ディープテックを探究し、ディープイシューを解決する
研究者的思考によって発掘される「ディープイシュー」
TECH PLANTERに集うベンチャーには、共通した特徴があります。それは、彼ら彼女らが、自らが設定した課題と問いの解決に向けて、すなわち課題解決そのものを事業としてテクノロジーとビジネスの開発に取り組む人々だということです。
すべての研究者は、常に「世界初」に取り組むことを存在意義としています。そしてそのモチベーションは、常に個人的なQuestionに端を発します。「なぜだろう」というシンプルな思いが、いつしか目の前の課題を深く追求していく生き方へと昇華し、それが結果的に世界的な発見へとつながるのです。
そのような研究者的な思考によってのみ発掘しうる深化された課題のことを、リバネスは「ディープイシュー」と定義しています。つまりTECH PLANTERとは、ディープイシューを掲げる人々の集まりなのです※6。
「知識製造業」と「ディープテック」。そして世界の未来へ
今、世界は解決すべき課題に溢れています。これまでのやり方では、もはや人類の未来はない。そうした危機感が現実味を帯びつつあります。この状況を瞬時に逆転できる魔法は、おそらく存在しません。しかしディープイシューを一つ解決することができれば、その先には「ディープイシューが一つ解決された未来」が生まれます。私たちは、このやり方で、新たな未来をつくりだしていきたいと考えています。※6
では、ディープイシューの解決は何によってもたらされるのか。それがテクノロジーです※7。単一の技術である必要はありません。複数のプレイヤーが自らの情熱とテクノロジーを持ち寄り、それを組み合わせる「知識製造業」を重ねることで課題解決へと前進していく。こうしたテクノロジーの集合体のことを、リバネスは「ディープテック」と定義しています。
2024年現在、TECH PLANTERは7分野のディープイシューを設定し、その活動は日本全国のみならず、東南アジア6カ国、そして世界へと広がっています。Exploring Deep Tech & Solving Deep Issue. 世界のディープテックを探究し、世界のディープイシューを解決する。TECH PLANTERとは、そのためのエコシステムなのです。
これまでの活動実績と主なメディア掲載
2024年9月1日時点での活動実績
- TECH PLANTER 延べエントリー数(国内): 4,302チーム(領域、地域の合算)
- TECH PLANTER 延べエントリー数(海外):1,936チーム
- 地域TP 延べ開催地域数・エントリー数:17地域・1,774チーム(2023年度まで)
- TECH PLANTER出身ベンチャーによる資金調達額の推計:750億円以上
主なメディア掲載
官庁系
- 中堅・中小企業とスタートアップの連携による価値創造チャレンジ事業
経済産業省関東経済産業局(2021年7月15日) - スタートアップのための社会実装ガイドライン | Startup Factory(スタートアップファクトリー)構築事業
一般社団法人社会実装推進センター - 2017年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)
経済産業省(2017年6月12日)
メディア
- 「もうかる」より「世界を変える」研究を支援 日本経済新聞(2019年6月7日)
- スタートアップはシリコンバレーではなく東南アジアへ行こう 日経ビジネス(2021年6月1日)
- リバネス、ものづくりスタートアップ向け施設を拡充 日本経済新聞(2019年6月4日)
- 研究者のポケットには、好奇心と探究心さえあればいい WIRED(2020年4月20日)
- 超異分野チームで課題をビジネスに | 増え続ける海洋ごみ 日本財団ジャーナル(2020年6月26日)
- 特許におぼれるな 大学発スタートアップこそ「知識戦略」を持て IPBASE(2019年6月26日)
- 大学の知、スタートアップが実用化後押し 日本経済新聞(2020年9月27日)
- リバネス、ガレージからスター誕生 日本経済新聞(2018年6月21日)
Reference
- 経済産業省ウェブサイト「大学発ベンチャー」内「大学発ベンチャー1000社計画」に記載あり
- 代表例としてY Combinator、Plug adn Playなど
- 丸幸弘, 畑中隆, 松原尚子(2016). 「勘違いする力」が世界を変える. 97-106.
- 製造業も知識を売る時代へ. 創業応援 vol.18, 11-16
- エコシステム、8年目の現在地. 創業応援 vol.22, 20-21
- TECH PLANTER 6年目の再定義. 創業応援 vol.15, 20-25
- テクノロジーの定義について、現時点でTECH PLANTERでは次のように定義しています。「テクノロジーの本質は変化そのもので、①それ自体が変化していき、また②それによってしか引き起こされない変化があるもの、がテクノロジーであると考えています。」
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