マリンテック – 海の課題へのチャレンジは地球の課題へのチャレンジである –

2024/03/14
INDEX
  1. 01大きく深い海の課題に科学技術の集合体で挑む
  2. 02メンバー全員で脳みそに汗をかいて知識製造を推進する

マリンテックグランプリ2023 審査員長あいさつより

株式会社リバネス 国家政策研究センター センター長 武田 隆太

リーダーシップを発揮して海の課題を解決するのは誰か

本日、審査委員長を務めるリバネスの武田と申します。今日はいよいよマリンテックグランプリの本番ということで、ファイナリストの皆さん、準備は万端かと思います。皆さんの熱のこもったプレゼンテーションの前に、このテックプランターは、地球の課題を解決して世界をより良くしていく場であるということをお話しします。

地球の課題を解決するというのはテーマが大きすぎて、何から手をつけていいかわからないかもしれません。しかし、今日ここに集まっているのは、海や水圏に関するものならば、たとえどんなに大きい課題でもチャレンジしていきたい、解決のための一歩を踏み出そうと考えている、そんな方たちだと思います。

海とは地球そのものです。地球の30%は陸地にもかかわらず、なぜ私が「海とは地球」と言ったか。
地球の誕生が46億年前で、海の誕生が44億年前。地球を一人の人間にたとえると、その95%の時間、海は地球の人生と一緒に過ごしてきた伴侶のような存在と言えます。つまり、海の課題を解決することは、地球の課題を解決することに密接に絡み合っているのです。海の課題にチャレンジするということは、地球の課題にチャレンジすることだとぜひ考えてください。

海の誕生から8億年後に生命が誕生します。さらにそのずっと後に陸上動物が誕生し、最後の最後に我々、人類が登場します。母なる海、生き物を生み出してきた海、いろんなものを浄化する海、きれいな海。しかし、18世紀後半に起こった産業革命からたった200年で、人間の活動によって海の課題が山積するようになりました。

それは誰がやったのでしょうか。何と答えますか?「自分は知らない」「僕たち・私たちがやったんだっけ?」「一、二世代前の人たちが関与しているのでは」「そもそも海って誰のものなんだっけ?」……。世界とつながっていて、誰かのものではない海。そこに課題が山積しています。

誰がリーダーシップを発揮して海の課題を解決していくのか。それこそが新時代のマリンテックであり、これから課題を解決していく人たちの考え方なのではないでしょうか。誰のものでもないし、誰に頼まれたわけでもない。でもそこに大きな課題がある。人類がこれまでお世話になってきた海に貢献し、地球の課題を解決していく。これこそがマリンテックです。これを一生懸命、これから何時間もかけて考え抜いて解を出していく。そんなテックプランターにしたいと思っています。

大きく深い海の課題に科学技術の集合体で挑む

海の課題は大きいです。大きいし、深い。1社の技術、1人の技術や思いだけで解決することはできません。だから、科学技術を組み合わせて集合体を作り、課題解決に邁進していく。各人が持っている技術、アセットを持ち寄って課題を解決する。この考え方こそが、リバネスが2014年に立ち上げたテックプランターのコンセプトです。未解決の課題(ディープイシュー)を科学技術の集合体(ディープテック)で解決する。これをマリンテックで実現しましょう。

この考え方に惹かれて、これまでに日本だけでなく世界各国の3,500以上のチームが集まってきました。日本発、アジア発の技術が世界につながっていく。一緒にやりたい、この国や地域の海域を使いたい、この現場を使いたい、このテクノロジーを組み合わせたい。そういう気持ちがあれば、テックプランターに集まったチームの中から世界中で連携が生まれます。

ファイナリスト、アラムナイ、審査員、パートナー企業、そしてリバネス。皆で海の課題解決に奔走してきました。その結果、2017年にスタートした海底探査のための技術開発のプロジェクト(DeSET)や、2019年に開始した海ゴミ削減ビジネス創出のプロジェクト(IKKAKU)など、これまでに8つのビジネスモデルが生まれています。

海の課題は時間がかかるし、難しそうだと思う人もいるかもしれません。でも、1年でいろんなことが起こります。昨年のファイナリストのプレゼンテーションからも、多くのコトが生まれました。
パートナー企業の旭有機材とリバネス、そしてマリンテックのアラムナイチームで、陸上養殖の新しい仕組みを作るプロジェクトを立ち上げました。イノカとフォーカスシステムズは、これからのマリンテックを担う子供たちの育成プロジェクトとして「しながわサンゴ礁ラボ」を立ち上げています。MizLinksは、リバネスが今経済産業省と進めている日ASEANの実証事業に採択されました。また、ARKと常石グループCVC、商船三井グループCVCが資本連携しました。たった1年でも、いろんなことが起こるのです。

メンバー全員で脳みそに汗をかいて知識製造を推進する

こうしたプロジェクトを次々に立ち上げるために、リバネスは2023年、コーポレートブランドを「知識プラットフォーム」から「知識製造業」に変更しました。これまでテックプランターに3500以上のチームが集まって、世界の課題を解決するプロジェクトがたくさん生まれてきました。もっと世界の課題を解決するプロジェクトを生みたい。これからは我々がもっと主体になってプロジェクトを生んでいく。その覚悟を表しています。

知識製造業とは、「知識と知識の組み合わせによって新たな知識を作り出すこと」です。皆さんのプレゼンテーション、課題感(Question)、情熱(Passion)が知識です。それを組み合わせて、新たに未解決の課題を解決する方策を生んでいきましょう。テックプランターは知識製造の現場です。今日はプレゼンテーションをするファイナリストの皆さんだけでなく、審査員もパートナー企業もリバネスも、ここにいるメンバー全員が脳みそに汗をかいて、世界の課題解決をするプロジェクトを生んでいきたいと思います。

ファイナリストの皆さん。上手なプレゼンテーションである必要はありません。言葉に詰まってもいい、ワールドワイドでなくてもいい。自分の半径5メートルの世界でもいい。自分が何を見てきて、どんな課題感を持っていて、それをどうやって解決したいのか。自分が本当に解決したいと思うクエスチョンとパッションをぶつけてください。

審査員の皆さん。直感と感性、人生観を信じて飛び込んでください。所属する会社の方針と必ずしも一致しなくとも、プレゼンテーションを面白いと感じたり感動したら、どんどんプロジェクトを作っていきましょう。そして審査員である我々は、ファイナリストに審査される立場側でもあります。テックプランターはコンペティションの形をとっていますが、やりたいことは優劣を決めることではありません。ディスカッションの場です。どうやったらこのプロジェクトが進むだろう、こうすればいいかもしれない。そういう議論をたくさんしましょう。

そしてリバネスのコミュニケーターのみんな。我々が一番脳みそに汗をかきましょう。こんなことを試してみませんかと、ファイナリストにも審査員にも自ら声を掛けに行ってください。
そしてみんなで世界の課題を変えるプロジェクトをつくっていきましょう。